好きになんか、なるもんか!
二章 恋人同士
「………」
「………」
私と一條君は廊下を歩いています。ただ、女子の視線と陰口が痛く突き刺さります。
「や、やっと教室だぁ」
「…んじゃここからは別々だな。
休み時間にまた来る」
そう言うと直ぐ様行ってしまった。所詮はただの“フリ”。冷たいのも他人行儀なのも当たり前。なのに私は何でOKしてしまったんだろう。
「…おはよう……命」
「あ……ソウちゃん」
そう、私が恋をしているのは幼馴染みの一之瀬蒼汰【いちのせ そうた】だった。正直今会いたくなかった。
「お、おはようソウちゃん」
「命……その…さ。お前が一條と付き合ってるって本当なのか?」
グサッ
ソウちゃんの今にも泣き出しそうな顔。見てるのも辛い。でも…これはただの“フリ”だから本当の事、言っても良いよね?
「あ…あのね! これはその、一條君とはね。本当は何でも―――――」
「呼んだか命」
私達の後ろに立っていたのはさっき分かれた筈の一條君だった。最悪だ。
「……お前が一條か」
「…そうだけど……お前、もしかして命の彼氏か?」
「俺は命の幼馴染みだ」
火花バチバチの二人は向かい合って睨み合ったまま動かない。
「…おい、喧嘩するなら別の場所でしろよ」
「二人とも邪魔だよ~」
この声は…!
「綾子ちゃん! 日和ちゃん!」
「よっ、命」
「おはよう~、命ちゃん」
宮野 綾子【みやの あやこ】ちゃんと木下 日和【きのした ひより】も私の大切な幼馴染みだ。