乱華Ⅱ
夜も深夜に差し掛かる様な時刻。
空の色もより一層深く、闇のように染まる。
ポツリと見えていた月は、いつの間にか雲に隠れて姿を眩ませていた。
「…あ」
「あ?」
ふわり、私の頬に冷たい何かが触れたかと思うと、再び訪れる冷たい感触。
降りそうで降らなかったそれ。
2、3日前に颯人が降るかもなと言ったそれは、雪。
ちらりちらりと遠慮気味に降っていた雪が、だんだんと強さを増してこの倉庫に降り注ぐ。
「…こりゃホワイトクリスマスになるかな〜」
「…あんまり寒いの嫌だけどね」
「夢がねぇなぁ〜」
ポツリ呟くそれに小さく頷き返せば、修はタバコに火をつけながら苦笑いする。
…まだ吸うつもりですか。
もはやヘビースモーカーと言っても過言ではない修には、あえて言わないけど。
ゆらゆらと揺れるその紫煙を横目で見ていた時
「おい!心、修!雪!雪降ってんぞ!」
そしてそれと同時に聞こえて来た興奮気味の声。
遠くにいたタクが私達を探しに来たのか、こちらに小走りで近づいてくる。
それに修は「うるさいのが来たな〜」なんて言いながらも、口元は緩んでいた。