乱華Ⅱ
まるで動くことを忘れたかのようになっていた彼らだが、時間を置くことおよそ1分。
「…それは、誰のお墓なのか…って聞いても?」
正宗が若干困った顔をして、遠慮がちに聞いてくる。
私の視線は誰に向けるでもなく、目の前の真っ黒いコーヒーに向けポツリ小さく呟いた。
「……両親、」
その単語に誰かが息を飲むのを感じたけど、視線はそのまま。
本当は言いたくないし、こんな重い話みんなも聞きたくないと思う。
だけどそれでも言ったのは、言えない事が多い私が今、話せる事だから。
勇気を出して信じてみたいと言った修に、私も応えたいと思ったから。
「心」
じっと動くことも瞬きすることもせずに、コーヒーに落としていた視線をあげたのは、低く落ち着いた声がしたからで、
その声の持ち主…
颯人は私の目を真っ直ぐに見る。
射る様な瞳じゃなくて穏やかな優しい黒。
「車は梶に出させる。気が済むまでいてやれよ」
「…あり、がとう」