乱華Ⅱ
昨日いつの間にかいなくなっていた梶さんは、しばらくして倉庫に現れた。
昨日の今日でも彼は嫌な顔一つせずに、送って行ってくれるらしい。
雪の心配をすれば、タイヤはちゃんとスタッドレスらしく、雪でも心配ないとの事。
お墓参りでも一応、と言ってタクが同行してくれるらしいが、車で梶さんと待っててくれるみたい。
「…いくら俺でも、弁える所くらいわかってっから」
いつもと違って落ち着いたトーンで話すタクに、ごめんと心の中で呟いた。
ごめん。
やっぱりこんな空気になるよね。
正宗は何も言わなかったけど、心配そうな視線を何度も私に寄越していた。
「これよかったら持って行けよ」
ここを出る時司が私に渡してくれたのは、いつの間に買ってきたのかおはぎ等のお供え物。
「じゃぁ俺はこれやるよ〜」
そして司の横に立つ修が小さな墓花をくれた。
「…ありがと」
「気をつけて行けよ」
みんなに向かって言えば帰ってくる温かい言葉。
いい話をしたわけじゃないのに、言って良かったと思えた事がすごく不思議であり、勇気を出してみてよかったなと思えた。