乱華Ⅱ




車に乗り近くの花屋さんでお墓参り用の花束を購入し、桜田霊園へと向かった。




雪のせいかいつもより車が少なく感じたけど、流石はクリスマス。
ここから見える歩道には、カップルや雪ではしゃぐ家族連れがたくさん見てとれた。






隣に座るタクは私に背を向け、窓の外へ視線を向けたまま、何を考えてるのか…こちらを見ることはない。




シーンとした車内の中、いつもなら梶さんも会話に加わってくるけど、今日は空気を読んでか何も言わなかった。





それからもしばらく車は走り、だんだんと見覚えのある場所になっていく。






あまり大きくない橋を渡って緩やかなカーブを曲がれば見えてきた。


道路沿いに植えられた桜の木は、今は枝だけになっていて葉っぱの一つもついていない。




「着きました」


程なくして梶さんが車を駐車場へと入れ、私の方へと振り返った。



それにお礼を言って車から降りようとドアを開いたとき、




「心」


「…」


返事をせずにタクの方へ向けば、彼もこちらを向いていて、合わさる目線。







「俺は、どんな事でも、お前の事知れて良かったと思うからな」


「…うん」


「じゃぁゆっくりして来いよ」




タクはそう言って私が降りたのを確認すると、ドアをバタンと閉めた。



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