乱華Ⅱ
話してる最中タクの眉間には深い皺が刻まれていて、梶さんも目線を下に下げて俯いていた。
「辛かったな」
話終わってタクが私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。
そのリズミカルな動きが私にとって心地よくて、されるがままになっていた。
「うん。…でもなんか今すごくスッキリしてる」
なんでだろう?
今まで誰にも話さなかった事を聞いてもらって、心のつっかえがとれたみたいな感じになるのは
あぁ、私。
ずっと誰かに…話を聞いてもらいたかったんだ。
今まで誰にも…言えなかったから
その考えに至った私に勢い良く抱きつくイカツイ梶さん。
…おもわず足を滑らせそうになったんですけど。
「心ちゃん!辛かったな!!
あれだったら俺の事親父みたいに思ってくれていいからな!…いや、兄貴か!?」
こんなナリして瞳をうるうると潤ませながら、そんなことを言う梶さん。
「いや、遠慮しとく」
だけどごめんなさい。
私はそんなの梶さんに求めていません。
丁寧にお断りする私に、ショックそうな顔をした梶さん。
もう私たちの間に、辛気臭いような、微妙な空気は漂っていなかった。
パパ、ママ。
悲しみは完全に消えることはないけれど、これで少しは気持ちの切り替えができそうだよ。