乱華Ⅱ




また口内が血の味でいっぱいになった。
これ最悪の大晦日だよ。



後ろから拘束され、口元ってゆーか首に腕が回っているから、抱きすくめられた感じになっている。


何故かその距離感に安心してしまった私は、少し落ち着きを取り戻した。




「…おい。ブランドがなんだって?」


地の這うような声でタクが目の前の彼女に問いかける。

問いかける、というよりは言ってみろよって命令のようだけど。



抱きすくめられているせいか声がダイレクトに聞こえてきて、私に言ったわけじゃないのにその声に背筋がゾワリとした。



彼女はただ私達を見つめたままガタガタと震えていて、タクの質問さえ聞き取れていないよう。



その瞳からは恐怖、焦り、不安などが感じ取れる。
ここから逃げ出したいのに動けない。そんな感じ。



「……まぁいい。今の聞いて無かったことにしてやるから、2度と俺達の前に面見せんな。気分悪ぃ」


私をギュと抱きしめながら言葉を漏らすタク。

その声を聞いた瞬間残り2人が動けないでいる彼女を引きづりながらこの場を後にした。



< 168 / 200 >

この作品をシェア

pagetop