乱華Ⅱ
また口内が血の味でいっぱいになった。
これ最悪の大晦日だよ。
後ろから拘束され、口元ってゆーか首に腕が回っているから、抱きすくめられた感じになっている。
何故かその距離感に安心してしまった私は、少し落ち着きを取り戻した。
「…おい。ブランドがなんだって?」
地の這うような声でタクが目の前の彼女に問いかける。
問いかける、というよりは言ってみろよって命令のようだけど。
抱きすくめられているせいか声がダイレクトに聞こえてきて、私に言ったわけじゃないのにその声に背筋がゾワリとした。
彼女はただ私達を見つめたままガタガタと震えていて、タクの質問さえ聞き取れていないよう。
その瞳からは恐怖、焦り、不安などが感じ取れる。
ここから逃げ出したいのに動けない。そんな感じ。
「……まぁいい。今の聞いて無かったことにしてやるから、2度と俺達の前に面見せんな。気分悪ぃ」
私をギュと抱きしめながら言葉を漏らすタク。
その声を聞いた瞬間残り2人が動けないでいる彼女を引きづりながらこの場を後にした。