乱華Ⅱ



***




「…あぁ。んじゃぁそーゆー事で」


「颯人、何て?」


「人が多くて身動きとれねぇからそのまま参拝してくるんだと」


「ふーん」


タクと行き着いた先はさっきのベンチの所よりもひと気のない場所。
一応神社の敷地内にはいるみたいだけど、境内のある所からは少し離れていてこの周りには出店もない。


自動販売機が寂しくポツンと佇んでいるだけ。




「ほら」


「あ、ありがと」


ぶっきらぼうにズイっと差し出す缶コーヒーを受け取れば、手のひらにほんわかと温もりが広がった。



「で、どうする?」


タクが近くにあった石垣へと背を預けるから、それに倣って隣に並ぶ。
缶コーヒーを飲んで、少し気怠げな視線を私へと向た。



「何が?」


「初詣。お前は行きたいんじゃねーの?」


「…あぁ。別にいいよもう」


なんか疲れたし。
わざわざあの人混みに戻りたいなんて今更思えなかった。

それにお前はって事はタクは別に行きたいわけじゃないんでしょ?



だったらもういいよ。
特別に初詣に行きたいとかじゃないし。
今日みんなといれただけでも、去年の私からは考えられない事だし。



遠くで聞こえる除夜の鐘。
ふと今何時なんだろうと思い、携帯で時間を確認した。



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