乱華Ⅱ



「あっ!おい気づかれたぞ!」

「チッ!やっぱり本人じゃねぇか」

「何でこんな所に…!」



微かに聞こえた男達の声。




え?何?何事!?


いきなり私の手首を掴んでツカツカと歩き出した颯人。
多分颯人からしたら早歩きなんだけど、いかんせん私と颯人の足の長さが違うもんだから、私は自然と小走りに。



片手で携帯を操作して電話をかける颯人は誰かと何かを話してるけど、周りがざわついていて私にはよく聞こえない。




人の流れを切るように歩く颯人(と私)はまるで逆走しているかのようになってるし。


どうにかこうにか他人とぶつからないものの、
すれ違い様に何事かと振り返ってるのをなんとなく感じた。




あの席から外を見てたけど何があったのか…

(考えるまでもなく後ろで怒鳴る連中がいたんだろうけど)


私の視界を遮るようにいきなり手首を掴んだ颯人。

(見られては困る人物なの…?)


…そしていきなり不機嫌になった颯人。




それらを総合して考えても後ろを振り返る勇気が出て来ないわけですが…



ざわざわしているショッピングモールだけど確実に私たちに向かって「おいっ」とか「待てよ」とか聞こえて来た。


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