乱華Ⅱ



「んな顔すんな…すぐ戻る」


心の声がだだ漏れだったのか、颯人は少し困った様な顔をして私の頭をポンと叩いて行ってしまった。




暫くして颯人が走って行った方へと、バタバタと数人が走っていく足音が聞こえてきたから、颯人はもしかしたら自分の方に注意を引きつけてくれたのかもしれない。



時折聞こえてくる怒声に肩をビクつかせる自分に腹が立つ。


自分の足手まとい感にイラつきを覚えつつも、5分間こんなわけのわかんない所で1人で待つって、ある意味下手な肝だめしより怖いと感じる。



足元に置いてあるマグカップのショップバックを見てこんな事になるんなら、やっぱり帰る直前に買えばよかったなんて思ったり。




そもそもなんで正月からこんな目に遭わなきゃいけないのか。陽炎って本当にしつこいってゆうか…なんでこんな所にいたんだろ…


地元からは少し離れているはずなのに。




私の運が悪いのかなんなのか…



「車来たぞ!乗れ!」


視線を向いにあるシャッターに向けて考えていると左側から颯人の声が聞こえてハッとした。


右を見ると路地の入り口に梶さんの運転する車が後部座席のスライドドアを開けながら、キキーっとブレーキ音を鳴らし停車する所だった。



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