乱華Ⅱ
颯人に促されるまま車に向かって走り出したけど、さっき買ったショップバックやマグカップが邪魔になって走りづらい。
颯人の背後にはまだ数人の足音が聞こえてるから、完全には撒けなかったみたい。
捕まってたまるかって気持ちでほんの少しの距離を全速力で走る。
「ほら!」
車の中には既に私と颯人以外のメンバーが乗っていてタクの差し出す手を掴んで車に飛び乗った。
私のすぐ後に颯人も乗ってスライドドアが閉じる瞬間ー…
「っ…ここ……さ…待っ…!…こう…」
颯人の背後にいた男が何かを叫んでいたが、閉まるドアの音、私や颯人の呼吸音、車の中の音楽で鮮明には聞こえなかった。
「チッなんでこんな所に陽炎がいんだよ」
車が発進した事により遠ざかっていく男の姿を憎々しげに見ながら呟く隣のタク。
「マジで正月からやめてほしいわ〜」
「少しはゆっくりさせろって話だよな!」
三列目にいる修や司。
「颯人、さっきの連中は下の奴ら?」
「…わかんねぇ。確認なんかする暇なかったしな」
正宗と颯人が話しているけど、この時私の耳には彼らの声は一切入ってきていなかった。