乱華Ⅱ




***




「よ。おめでとーさん」


「…」


「おーい。聞いてる?」


「…」


「おーいっ!心ちゃん?」


「あ、え?蓮!?なんでいるの?」


ハッとした時には私が座るソファーの前にしゃがみ込み、わざとらしく泣き真似をする蓮の姿が。



「ひどくね?俺結構前からいるんですけど?」



確かに言われてみればさっき幹部部屋に入って来たのを横目で見た気がする。


あの日から数日後の今日は冬休み最終日なわけだけど、生憎私の心は現在進行形で穏やかではない。
あのお正月にあった出来事…っていうかあの男の声で頭いっぱいだ。


ちゃんと聞こえたわけじゃないし、もしかしたら人違いかもしれない。
似ている声なんてザラにいるでしょ。



…だけどそうじゃなかったら?



ーもしバレたらどうなる?

ーでもバレたとして何かあるの?

ーあの人が私を探すなんて事は絶対にない。

ー籠の鳥は連れ戻されるなんて有り得ない。




そんな思考がグルグルと回っていた。



気付けば蓮だけではなく幹部部屋にはいつぶりかな?奏多さん、碧といった傘下の総長達が揃っていた。



もちろん乱華の幹部も全員。



てゆーかあんまり可愛くないよ。その泣き真似。いつまでするのその茶番。
…まぁ思ってても言わないけど。
だって更に面倒くさい事になりそうだし。



「ところで蓮っていつ来るの?」


その証拠に正宗は明らかに蓮をいないものとして扱っているし。
わざとらしく小首を傾げながら腕時計を見ている。



「いや、いるから!俺いるからね!?」



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