乱華Ⅱ
颯人のバイクはなんてゆうか、思った程スピードも出てなくて、比較的ゆっくりだった。
それはもしかしたら私が乗ってたからかもだけど…なんて。
「…寒ー」
「今暖房付けるから待ってろ」
冬のバイクの寒さが尋常ではなくて、寒いというよりはもう痛いだった。
3日後またあれに乗らなきゃだと思うと、逃亡したくなった。
正宗にお願いしたらもしかしたら、梶さんの車に乗れるかもしれない。
…よし、明日頼んでみよう。
タクのマンションに着いてソッコーで毛布に包まる私に呆れた視線を向けた颯人。
だって寒みーんだからしょうがなくね?
もう開き直って毛布から顔だけを出して颯人に尋ねた。
「…今日タクは帰って来るの?」
ここの主がいないのに、ここにいる私達。
主不在というのはちょっと気が引けるというか、なんというか。
「いや、今日は俺がここに泊まる」
「ふーん…って、はっ!?」
「…不満か?」
「いや…不満ではない、けど」
ここに1人だって言われるよりはずっといい。
でも颯人とこのマンションに2人っきりってのも、それはそれで心臓に悪い気が…してきた。
「風呂入って来い。風邪引くぞ」
颯人は私の頭を撫でて脱衣所の方を示す。それには素直に頷きお風呂に入ることにした。