乱華Ⅱ
…違わない。
私は颯人のお姉さんの梨桜さんの事だって気になっている。
そりゃ常にその事を考えてるわけじゃないけど、不意に頭を掠める。
“梨桜の話はあんまりしたくねぇんだよ”
あの時のタクの言葉が蘇る。
人の死に触れるような事、そんなに簡単に聞けない。聞いちゃいけない。
そんなの痛いほどわかってる。
…わかってるんだ。
「…じゃぁ、颯人は私に言えるの?」
だけどズルい私は何がとは言わずに、視線を颯人から逸らして告げる。
「…お前が言うなら、言える。お前が何を隠してるのかは知らねぇけど、たとえその事を知ったとしても、俺はお前の前から消えねぇよ」
「っ…」
私の事を知ったとしても…?
…でもあそこに繋がることは言えない。
言わない。
だって私はもうあそこには関係ないから。
それにこれは弱い自分を守る為の唯一の手段でもある。そこを崩せば私は一気に脆くなる。そんなのダメだ。
「…そう。でも、私は颯人に何も隠してない、から」
ズルくて、ごめんね。
「……それでも、俺はお前の味方だから。辛くなったら言えよ」
「…ありがとう」
こんな私にはもったいない言葉だよ。