乱華Ⅱ
ふかふかの布団に入ると微かに颯人の香りが鼻腔をくすぐった。
そして寝る体制を取ろうとした所で部屋の扉がふたたび開いた。
ドアへと目を向けると、スウェットに着替えた颯人がいて、何を思ったのかそのままベットへと侵入してきた。
「…颯人?」
「あ?」
いや、あ?じゃなくて。
なんで威嚇すんの。そんな鋭い目しないでよ。
意味わかんない。
「…一緒に寝るの?」
「あぁ。何もしねーよ」
いや、そんな心配してませんけど?
颯人はそう言ったかと思うと、私に背を向けた。
それにならって私も颯人と反対を向いて目を閉じた。
しーんとした部屋に響く時計の音。
外からたまに聞こえる車の音。
ここのマンションは夜より夜中の方が騒がしいのか、と前の時と比べてげっそりした。
「…」
「…」
「…颯人、もう寝た?」
「…」
返事はなくて、その代わりにスースーと寝息が聞こえてくる。
「………もしも。…もしも、いつか話せる時が来たら…その時は…ちゃんと聞いて、ね」
ポツリ小さな声で呟いて眠りにつく。
「あぁ」
意識が飛ぶ瞬間、颯人の声が聞こえた気がした。