乱華Ⅱ
「ま、何はともあれあと1時間もしたら暴走だから気合い入れとけよ」
颯人が低音のよく響く声で告げると、それまでふざけていたタクも修も司も無言で頷いていた。
心ちゃんだけが、今だに納得していない様子だったけど、それは前回も一緒だから気にしないことにしておく。
それからはふざけることなくそれぞれが準備にかかり午後6時50分、倉庫の下に乱華のメンバーがずらりと集まっていた。
黒の特攻服に身を包む男たちの中にただ一人、私服姿のハニーブラウンの髪をした少女。
バイクのライトに照らされて、みんなと対照的な白のダウンを羽織っている彼女はそれだけで存在感を放っている。
「そろそろ時間ですね」
黒塗りの車にもたれ掛かりタバコをふかす梶が、ポツリ漏らす。
その言葉に「あぁ」頷き後部座席へ心ちゃんを乗せ、自分も助手席へと乗り込んだ。
「大人しくしとけよ」
「こんな時に騒ぐほどバカじゃない」
颯人が心ちゃんに言って、バイクへと乗る。
前回と違って颯人がバイクのエンジンを吹かすと、周りの奴らもそれにのってエンジンをかけた。
「…あぁ、始まる」
ポツリ、心ちゃんが呟いたのを確認したように颯人が先陣を切って倉庫から走り出した。
いよいよクリスマス暴走が始まる。