乱華Ⅱ
修は何も言わない。
無言のまま時が過ぎる。
ゆらゆらとゆれる紫煙が空へと登って行く。
私の白い息もそれに混じり合うかのように。
修はゆったりとした動作で私から空へと視線を向けた。
その横顔が儚げに見えて、いつもの軽く、緩い彼は存在しない。
…やっぱりどこか様子がおかしいのは気のせいじゃなくて。
私が言葉を発する前にその口が開いた。
「…お前俺に聞きたい事あるだろ」
いつもの間延びした喋り方ではない。
ハッキリとした、確信的な言い方。
…彼は何が言いたいんだろう。
私がもしここでうんと言えば、それを教えてくれるっていうんだろうか。
私はそれに答える事なく修をまじまじと見た。
「クリスマスなんてクソな思い出しかねぇ」
ハッ乾いた自嘲的な笑みを洩らしそんな事を言う。
「…修?」
「俺が女を振り回しても振り回されない理由が、知りたいんだろ?」
「…え」
うん、と言えないのは私が踏み込まれたくないから、なのかーーー…
そんな私にも彼は軽蔑したりなんかせずに、教えてくれた。