乱華Ⅱ
「…ちょっと、やめてよっ!!」
リンと鈴が鳴った様な声は怒気を含んでいて、明らかに拒否を示している。
「いいじゃねぇか。ちょっと相手してくれるだけでいいからよぉ」
少し遠い場所にいた俺からは、男と女が口論している姿だけが見えた。
そしてわかるのは男が酔っ払いだってこと。
もちろん周りの奴らは見て見ぬふり。
まぁこの繁華街でこんないざこざは日常茶飯事。
いちいち相手にしてられない、と言った所か。
ぶっちゃけ面倒くさい。
でも遭遇してしまったからには、仲裁しなければならない。
それが俺たち乱華の仕事だ。
「はぁ」
わかりやすいくらいのため息を吐いて、その口論している所へと向かった。
「おい」
男の腕を掴んで女を背中に隠して、間に割って入った。
「…あ?」
男は元々釣り上がった眉をさらに釣り上げて、俺を睨みあげる。
「ああ!?誰だお前!ガキが粋がってんじゃねーぞ!オイ!!」
…だけど全然怖くないのは、この男の身長が俺より低いからか…それとも顔を真っ赤にして怒鳴り散らすしか脳がないからか…
おそらくどっちもだ。