乱華Ⅱ
下がっていた女の視線が恐る恐る、といった感じで俺へと向けられる。
「…大丈夫。ありがと…」
リンと鈴の鳴るような声。
甘い香りは彼女の香水なのだろう。
絡み合う視線にお互い言葉を飲み込む。
彼女は俺が余程怖いのか、何故か目を見開いて固まっていた。
まぁ容赦無く殴ったからねぇ。
…仕方ないかな。
くるくるに巻かれたロングヘアの髪は、日本人によく見る黒髪だったが、瞳はあまり見慣れない青。
肌は透き通るほどの白さで、少し濡れた唇だけがほんのり色づいていた。
身に纏う服は黒のロンTに白のショートパンツだったが、手に持つ鞄は一流ブランドのもの。
腕にはめられた高級時計。
胸元に光る高そうなアクセサリー。
あぁ、彼女はきっと
…夜の女なんだ。
「俺が、怖い?」
「…いや、ただびっくりしただけよ」
「ふーん。あ、出勤なら送るけど、どこの店?」
「oceanって店なんだけど…わかる?」
まじまじと見ていた俺がハッとしたように問えば、彼女もにっこりと笑ってキレイな声で答えた。