乱華Ⅱ
普段の俺ならあの日お礼がしたいと言われた時点で、ホテルに行っていただろう。
だけどそれじゃダメなんだよ。
それだと今までの遊びの女と同じになってしまう。
こんな俺でもミリには、ミリにだけは誠実でありたいとか思っていた。
まだ日が浅いとかそんなのは関係なくて、ただ俺がミリを知りたい。
あの笑顔を俺だけに向けさせたい、一緒にいたいと思った。
「…で?その女どこの誰なわけ」
そろそろ教えてもいいでしょ、と言わんばかりの正宗だが。
…まず、俺はコイツらにミリの話を一言も話した覚えがない。
ついでに話すつもりもさらさらないが。
それでもバレるっつーのは、俺が女を全て切ったからか…。
繁華街で見られたか…
切った事で少なからず混乱が起こったのは言うまでもなく。俺が手を出していた女がそれだけいたってコトだ。
付き合っていたわけではないんだし、別に可哀想だとは思わなかった。
だって元々そーいう関係だっただろ?
ただ俺なんかに振り回されて哀れだな、とは思ったけど。
「…誰だっていーだろ」
こいつらに話すと十中八九反対されるだろう。
繁華街の、それも夜の女なんて。
…だけど、俺はミリだけは違う気がするんだ。
夜で生計立ててるのだって理由があるって…親の残した借金を返す為だと言ったあの寂しそうな、辛そうな顔が脳裏にこびりついて忘れられない。