乱華Ⅱ
それ以上言葉が続かない俺のせいで、訪れる沈黙。
寂れたこの場所に人の気配なんてなくて、時折俺たちの間を吹き抜ける風の音だけが俺の鼓膜を刺激する。
数拍置いて、ミリが口を開いた。
「…あたしね、修があの時助けてくれて嬉しかったよ。
修が気まぐれで助けたとしても、あたしは嬉しかった。
…だって、いつもは誰も助けてなんてくれない」
「、そんな事…ないだろ?」
しゃがみ込む俺の目に映るミリの目は、少し暗く青い瞳もゆらゆらと揺れていた。
その瞳は寂しさを孕んでいる。
だけどちょっと待て。
…乱華はいつも見回りをしているし。
何かあったらすぐに対応してるはずだ。
ミリが言うことが本当なら、見落としがあるって事なのか…
それはそれで俺たち乱華もヤバいのでは…?
「あ、そういう意味じゃないの」
俺のぐるぐると頭を占める疑問を打ち消すかのような、ミリのあっさりとした否定の声。
「絡まれたのはあれが初めてよ?
でも、そうじゃなくて…なんてゆーか、お店で嫌なことあっても誰も助けてなんてくれないし、それが普通だと思ってた……
それに慣れてたの。
…だから、助けてもらう行為自体があたしには新鮮で、嬉しかったんだ。
だから、あたしにとって修は光みたいな存在」