乱華Ⅱ
繁華街の一番煌びやかな通りにあるocean。
今はまだ夕方で、本来の煌びやかさには欠けている。
それでもそばを通る人々は、そそくさとその場を通り過ぎて行く。
oceanに来たはいいものの、店はまだ開店時間ではない。
2階へと続く階段を見上げて考える。
どうする?このまま店に入ればいいのだろうか?
例え入ったところで、こんなガキの俺に店の子の情報を教えてくれるだろうか…?
チラリ見た携帯には何の連絡も入ってなくて、溜め息と共にその場に座り込む。
ちらりちらりと、通りすがりの人が俺を見てくるが、そんな事はどうでもよかった。
…どうなってんだよミリ。
なんで電話に出ない?
こんな時、本当はミリの家に行くのがいいんだろう。
…だけど俺はミリの家を知らなかった。
“あたしの家借金取りが来るから、修にはそんなの見られたくない”
困ったような、泣きそうな顔でそんな事言われたら、誰だって何も言えなくなるだろ?
「……ミリ」
ポツリ零れ落ちた声は、繁華街の喧騒にかき消された。