乱華Ⅱ
「サラさん今の音は…」
上からは外の騒ぎを聞きつけたボーイらしき男が、顔を出す。
「あぁ、いいのよ。ちょっと可哀想なぼうやが騒いだだけよ」
やけに耳障りな言い方をした女は、その言葉を最後に店内へと消えて行った。
「クソ…」
ふざけんな。
ギリっと握った携帯がミシリ、歪な音を立てる。
俺が遊ばれた…?
そんなわけないだろ。
昨日まで、ミリは俺と一緒にいたじゃないか。
いつも笑顔で、あの鈴の鳴るみたいな声で俺を呼んでくれたじゃないか。
好きだよって言ったのは嘘だって事なのか?
携帯を耳にもう一度電話をかける。
「お掛けになった電話は現在使われておりません」
機械的なアナウンスが流れて、思わず携帯の画面を見直す。
間違って掛けた…なんてあるわけもなく、そこに表示されるミリの名前。
何度掛けても、さっきまでは繋がっていたはずの携帯から流れる機械的な声。
…なんなんだよ。
どーなってんだよ…
意味がわからねぇよ―――
ミリ…
……どこに行ったんだよ?