乱華Ⅱ
正宗はチラリ、俺の足元に倒れる男に視線をやる。
その目は哀れんでいるわけでもなく、かと言って蔑んだものでもない。
ただ冷ややかな視線を投げかけるだけ。
そしてその焦げ茶の髪をかきあげて、ハァーとわかりやすい溜息を吐いた。
「あのさぁ、限度ってもんがあるでしょ」
「……そいつが売った喧嘩だ」
「だとしても、やりすぎ。これじゃ総長の耳に入るのも時間の問題だよ」
いや、もう知ってるかなと付け加えた正宗。
完全に伸びきった男から俺に視線を向け、やれやれと言わんばかりの表情をする。
うるせぇな。
じゃぁどうしろって言うんだよ?
総長…楓さんが知ったとして、だから何だよ。
破門にでもなるってのか?
だったらそうすればいい。
もうどうだっていいんだよ。
全てがくだらねぇ
全てがどうでもいい。
なのに、ミリの存在だけが忘れられない俺はどうしたらいいんだよ…?
…どうやったら、ミリの存在を忘れられるって言うんだよ?