乱華Ⅱ
俺より少し前を歩いていたタクがいきなり振り返り、真顔になって聞いてくる。
普段ふざけてるだけに、こいつの真顔は迫力があるんだよな…
「…まぁ、ぼちぼち」
俺はタクの目を見ることなく、苦笑いをする。
寝れるか、寝れないかなんて対した問題じゃねぇよ。
俺にとっての問題は、ミリがいないことだけだ。
「…修、あの女の事は忘れろよ」
俺の話を聞いているから、タクはミリに嫌悪感を抱いているんだろう。
あの女と言ったタクは、表情からわかる程に苛立っていた。
「…忘れられたら楽だろーな」
フッと自嘲的な笑いをする俺にタクは何も言わなかった。
ただその眉間に深いシワを作るだけ。
忘れられないんだ。
例えタク達からみたら最低の女でも、俺には忘れられない。
初めて好きになった女。
1ヶ月やそこらじゃ俺の中からミリは消えてくれなかった。
がやがやとうるさい店内で俺とタクだけが、浮いた様に雰囲気が違っていた。