乱華Ⅱ
ミリの肩を掴む手がスルリと落ちていく。
今ミリは何て言ったんだろうか?
頭では理解しているのに、感情が全くついていけていない。
これは俺の知るミリなのか?
「お前、ふざけてんじゃねぇぞ!?」
「あら、ふざけてないわよ。
あたしは思った事を言っただけ。
まさか乱華のプレイボーイがあたしなんかにハマるなんて誰も思わないじゃない?
あたしはただ遊んだだけなのに」
その鈴の鳴る声で残酷な言葉を紡ぐ彼女は、ふふと笑って口元に弧を描く。
「おい、美里(みさと)」
呆然と立ち尽くす俺と、ぎゅっと力強く握った拳を今にもミリに叩きつけそうなタク。
その動きをギリギリ止めたのは、落ち着いた低い男の声だった。
年は俺やタクより遥かに上だろう。
こんな日に黒のスーツを身に纏い、髪を無造作に立てた男は、明らかに大人のオトコだ。
そして、ミリを美里と呼ぶ。
ミリはそれに特に反応する事もなく、スーツの男へ歩み寄り
「あら?何か文句でもあるの?あたしがこんなオンナと知って結婚するのはあなたよ」
挑発するような声で言った。