赤い扉(ホラー)
「お母さん……」


りえは思わず笑みを作り、伸江に向かって駆け出した。


徐々に近くなる伸江との距離、そして、ハッきりと見えてくる伸江の悲しそうな顔に、りえは立ち止まった。


「お母さん……」


もう一度、そう呟く。


その瞬間、りえはハッと我に返った。


目を開くと、ソラを抱きしめている。


「大丈夫か?」


横には不安そうな国方がいて、りえはキョロキョロと辺りを見回した。


元に戻っている。


あの若い頃の母や父の姿もなく、ただ異様な足跡だけが見える。
「大丈夫」
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