赤い扉(ホラー)
何をとっても、幸せな考えしか浮かばない。



その幸せと共に、家に帰る途中の道。


伸江は青信号でも一旦止まり、見通しの悪い道を左右確認する。


そして、一歩、横断歩道へと足を踏み出し、急ブレーキの音と共に伸江の体は車のボンネットへ激しく当たった。


一瞬でクルリと世界が回ったように、車が見え、空が見え、冷たいコンクリートが視界に入る。


あぁ、死ぬんだ。


ぼんやりと頭の中で考える。


私もこの子も……。


そこで、伸江の記憶は途絶えた。


痛みも、苦しみもない。


ただ、この世から消える自分が理解できたことだけは確かだった。
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