しゃぼん玉の恋
プロローグ

思えば、あの恋が、27歳にして初めての恋だったのかもしれない。

あなたを初めて見た時...
トクンッ ...って。
まるで漫画の主人公のように、胸がときめいたのを覚えているよ。

ー2012年11月。
某テレビ局。
電話がバンバン鳴り響き、人の出入りが激しいオフィスに私は働いていた。
テレビ局といっても、華やかなイメージとはかけ離れた、まるで戦場のような職場だ。
「ねー、ねー。打ち上げの受付出る人決まった?」
ポンと肩を叩かれて振り返ると、お局の涼子さんが立っていた。
「あ、はい。私を含めて3人でお手伝いさせてもらいます」
私は笑顔で答えたが、内心では面倒くさいなぁ、と悪態をついていた。
「じゃ、明後日よろしくね。進行表渡すから確認しておいてね」
打ち上げの流れの書かれた冊子を3冊渡すと、バタバタと涼子さんは仕事に戻っていった。
私は気づかれないように小さくため息をつくと、涼子さんから受け取った進行表に視線を落とした。

ーこれは、彼と出会う少し前のこと。

私は打ち上げの手伝いを引受けたことを、今でもずっと後悔することになる。
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