safety place



 彼が私の両足を押し広げて入ってくるときの、耐えてるような顔が好きだ。

 じんわりと汗の浮かんだ額、それから、赤くなった耳朶や頬骨の所。苦しそうな顔を一瞬和らげて、少し笑ってくれるところも好きだ。

 大学を卒業してからしばらくフラフラして、今は専門学校で陶芸の勉強をしている拓さんの指には、いつも粘土がつまっている。もう洗っても落ちない汚れや、ガサガサした手の指の腹。その指で、色んなところを触られるのも好きだ。

 事務職で新社会人になり、一人暮らしをしている私の部屋に、拓さんはたまにやってくる。

 そして抱いて、時間を共有している。

『ここはセーフティプレイスなんだよ、俺にはね』

 そう、ぼんやりと言ったことがある。

 君がいて、その細くて温かい体や、ここにある沈黙や、香り。全部がしっくり馴染むんだよ、って。

 私は温かいお茶を淹れて、黙って聞いている。

 望まれれば手を差し出す。

 その時の、音や、空気や、光。

 外の寒さを遮断して、心地よい綿の中に包まるように。


 ここにいるとまるで、夢の中を漂っているみたいな――――――――



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