竜宮ランド(短編)
暮れなずむ空が急速に青く染まりだす。

続いて、地響きとも取れる轟音が天空にこだまし始めた。



「え?」



異変を感じるまもなかった。

次の瞬間、ナイアガラの滝のごとく大量の水流が天から降り注いできた。

雨などと言った生易しいものではない。

もし仮に大空を染めていたブルーが満々と蓄えられた水の色だったとしたなら、今起きている状況はまさしく「天」そのものが崩落したと言う以外なかった。

巨大な水がめの底が決壊したかのように――。


広大な竜宮ランドは瞬く間に逆巻く怒涛に飲み込まれ、水没していった。



僕は荒れ狂う濁流に流されながら必死で腕をかいた。

あまり水泳は得意じゃない。

学校でも25m泳ぐのがやっとなんだ!

仮に2000m泳げたとしても、どうなるものでもなかったが……。



『ゴボッ』



口の中に水が流れ込んできた。


しょっぱい!

海水だ!

息が……息が出来ない!! 



「助……け……て……!!」



僕は泣きながらもがいた。

それでも容赦なく海水は僕の口に入り込んできた。



「僕が……僕が……悪かったよ……お父さーん!! お母さーん!! ……」



ついに意識が薄れかけてきたその時、「誰か」が僕の腕をグイっと引っ張った。
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