竜宮ランド(短編)
「アサリは漢字で浅蜊と書くように、深く掘ってはいかんのじゃ」


おじいさんは慣れた手つきで砂地を掻き分けるや、あっという間にアサリを一つゲットした。



「ほれ、どうじゃ」



「……フン! いらないよ、そんなモン!」



僕はお父さんの言ったことも忘れ、駆け出した。



「何が潮干狩りだ!」



僕は走った。



「竜宮ランドに行きたかったのに!」



迷子になったってかまいやしない。

あんなお父さんやお母さんは少し困らせてやった方がいいんだ。



「あ!」



ぬかるみに足をとられると、僕は泥まみれの砂地に顔から突っ伏した。



――目の前が真っ暗になった。
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