愛なんてない



「自分で、出来るよな?」


お兄ちゃんに厳しい声音で命じられ、わたしは羞恥心に涙ぐみながら頷いた。


「……はい」


わたしはサテン地のワンピースの紐を解き、背中のファスナーに手を掛けた。


ジーッと不自然な金属音が乾いた室内に響く。


それからほどなくしてワンピースのリボンを解き、わたしの体を離れた布はパサリと足元に落ちた。


「よくできました。おいで、弥生」


お兄ちゃんが打って変わって優しい声音でわたしを呼んだ。


わたしはまるで操り人形みたいにそれに従い、お兄ちゃんの前に膝を着いた。


「いい子だ……」


お兄ちゃんはそう言ってわたしの顎を持ち上げ、唇を重ねた。


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