愛なんてない












足が痛くなってきた。


すっかり雨を含んだセーターやズボンは肌に張り付いて冷たい。


吐く息が白くて時々横切る車のヘッドライトに浮かぶ。


「イタッ……」


かかとの上にズキズキと鈍い痛みがあり、じんわりと滲む熱いもの。


たぶん靴擦れができた。


でも、わたしは痛みに構わず足を引きずりながらただひたすら歩いた。


体力がなくてふらつきながらも、ただ1人に会うために。




何時間歩いたかわからない頃、漸く見覚えがあるアパートが見えてきた。


< 209 / 412 >

この作品をシェア

pagetop