愛なんてない
愛し合っていれば浮気は許さないと声高に叫べるだろうけど。
愛がない結婚の約束をしたわたしは……。
三畳間からしばらくボソボソと京の話し声がして数分後。
「弥生、ちょっと30分だけ出てくる。作っててくれ」
京は着替えもしないですぐ玄関で靴を履いてた。
「あ、はい」
わたしはスエットの上からエプロンを着けようとする途中、慌てて京を見送ろうとして紐を踏んで派手にこけた。
「いっ……たあい……」
顔面をしこたま打ちつけたわたしを、京はクックッと笑いながら助け起こしてくれた。