愛なんてない






京のキスで頭が真っ白になってたけど、わたしは慌てて玄関に立った。


「い、いってらっしゃい……」


おずおずと小さく声を掛けると、京は微かに笑ってわたしの頭をポンと叩いた。


「うん、行ってきます」


京の後ろ姿を見送りながら、わたしはちょっとだけ胸が温かい。


本当に家族みたいで。


擬似的なものに過ぎないと分かってはいても。


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