愛なんてない



パラパラと降り砕け散った大きい雨粒。


あいつの涙を連想させるそれを見ながら、俺は左手で助手席にある箱の感触を確かめた。


まったく、これのためにずいぶん時間が掛かるもんだ。

以前には時間も金もなかったから、イミテーションだったが……。


それでも幸せそうに微笑んでくれた、最愛の。





ズキンと胸が痛む。





葵――。


俺と付き合わねば、葵はまだ幸せに生きていたろうか?



< 347 / 412 >

この作品をシェア

pagetop