愛なんてない
「……そうまで言うなら忘れさせてやる」
低い声で囁いた相良先生は着ていたシャツを脱ぎ、上半身裸になった。
わたしはゴクリと息を呑み、思わず先生の体を凝視した。
文系でひょろひょろとしたイメージだった先生が思ったより逞しくて、鍛えてある鋼みたいな肉体。
不覚にもわたしは綺麗だなんて、そんな印象を持って見とれてしまった。
けれど、相良先生の鋭く光る瞳を見た瞬間、ひと小さく悲鳴を上げて後ずさった。
獲物を狙う貪欲な肉食獣のような視線。
けれど、わたしの動きはすぐに相良先生に封じ込められた。
「……誘ってきたのはおまえだろう?」
相良先生はわたしの腕を纏めてネクタイで縛り上げ、そばにあるスツールにしっかりと結びつけた。
「しっかり忘れさせてやるよ」
相良先生の口の端が上がり、わたしに触れてきた。