愛なんてない



それは4年前に終わりを告げた。


『はじめまして、山口 咲子です。あなたが弥生ちゃんね? よろしくね』


華やかな明るい笑顔が素敵な、綺麗なオトナの女。


黒字に白いラインが入ったニットスーツがよく似合う。完璧な女性。


お兄ちゃんが付き合ってたカノジョを初めて家に連れてきた日。


気さくで優しいひと。料理や家事が得意で、しっかりしてて。


それなのに仕事も出来るキャリアウーマンで。


まるで、わたしのなりたい女性そのもの。


――ああ、とわたしは悟った。



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