可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
◇ ◆ ◇
店員のおねえさんが「いかがですか」って聞きに来たタイミングで、わざわざ渚はあたしのいる試着室に顔だけ突っ込んできた。
よりにもよって、いちばん馬鹿だと思うタイミングでそのままキスをしてきた。
ぴったりとくちびるを重ね合わせて、バカップルみたいなふりしてキスを続けてると、店員は何も気づかなかったフリして「ごゆっくり」なんて言って離れてった。でも声が上擦ってた。
たぶんこんな場所でいちゃいちゃキスをはじめたあたしたちにドン引きしたんだろう。
「………なんだよそれ。センス悪すぎだろ。何そのババアみてぇなの」
渚が覗いて来たとき、あたしは試着するために制服を脱いで下着だけになったところだった。
渚に酷評されてる下着姿のままキスを続ける。
「………べつに期待もしてねぇけど、おまえのそれ、マジ萎えるわ」
一度キスを止めると、ブラとパンツだけになったあたしの体を上から下まで無遠慮に眺めてから、渚は愚痴るように言う。
「俺よりおまえのがはるかに悪趣味、センスなしだろ。どこでこんなダサいの見つけてくんだよ」
そういってあたしのブラのストラップに指を引っ掛けると、限界まで引っ張ってばちんと弾いてくる。
「ちょっと。痛いんですけど?」
渚は心底がっかりしたように溜息を繰り返す。
「マジないわ。今時スーパーでももっとマシなの売ってんじゃね?」
そういって渚は腹いせのように何度もばちばちあたしのストラップを弾いてくる。