可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
◇ ◆ ◇
結局あたしたちは地下街のファッション区画を端から端まで何回か往復して。
親から振り込まれてるお金はほとんど手付かずに残ってるから、それで靴とかバッグとか上着とかいろいろ買いあさってトータルコーディネイトを完成させた。
最後に靴下屋でレースのソックスを買うときには、両手がショップバッグでいっぱいになっていた。
そろそろお開きかなと思って携帯で時間を確かめようとすると。
「ニカ、おまえちょっとコーヒーでも飲んでろよ」
渚がそんなことを言い出した。
「たしかこの先、スタバあっただろ」
「ニカ言うな。…………いいけど渚はどうするの?」
「俺は後から行くから」
そういって渚はあたしの背中を押す。
「なんで?便所でも行きたくなった?」
渚は本気で嫌そうに顔を歪めた後。
「おまえな。せめてトイレって言え。ってか女が男の前でそういうこと聞くなよ」
そういってあたしの頭を軽く引っ叩くと、さっさと歩いていってしまう。
ひとりになってもなんとなく視線を感じて周囲を見ると、あたしと同じくらいの高校生の女の子たちが、歩いていく渚の背中とあたしとを見比べてた。
その中に、あきらかにうらやましがってる目であたしを見てる子がいた。
こんな冴えない根暗そうなブスでも、同じ制服の男女が一緒にいるだけでカップルに見えるものなのか。
そんなことを思いながら、コーヒーショップに入って。
カフェラテを頼んで半分くらい飲んだところで携帯が鳴った。
画面には電話のマークと、登録してある『王様』の文字。
めずらしくメールじゃなくて。渚からの着信だった。