可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
『べつにいいけど』
解いていた指数対数の計算を終えてあたしが答えると、七瀬はおおきな目をこれでもかというくらい見開いた。
それから驚きすぎて声を裏返しながら言ってきた。
『えっ、あ、あの、でも俺、………その、俺べつに崎谷さんのこと、好きなわけじゃないんだよ……?』
七瀬由太は、ダサい髪型で放課後にガリ勉なんてダサいことやってるあたしに、釘を刺すように言ってくる。
『キスするからといって、俺のこと好きになったりしないでよ』とその目が訴えていた。
こいつ、ブスにキスするのはギリ耐えられても、ブスに好かれるのは耐えられないらしい。
---------たかだかキスくらいで、このひと何自意識過剰になってるんだろ。