可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「こういうのって?」
「………これじゃなんか俺がおまえからカツアゲしてるみたいな感じだろ」



あたしは別にそうは思わないんだから、べつにいいのに。

でも渚は「おごる」と言ったあたしの申し出を「いいつってんだろ」と言って頑なに断る。



「別にいいでしょ、これくらい。あたしが困るわけじゃないし。家、腐るくらいお金あるんだし」
「嫌味だな、相変わらず。つぅかさ」




渚はちょっと言いよどんだ後、結構マジな顔して言ってくる。




「おまえさ、もうちょっと気をつけろよ。金あるの知られたら、それ目当てでおまえに寄って来る男がいるかもしんねぇだろ」

「……お気遣いどーも。ほんと渚って、意外におせっかいだよね」

「違ぇよ。おまえが無防備すぎんだろ」



すこし怒ったように言いながらも、心配するような目をする渚は、やっぱりおせっかい以外の何ものでもなかった。

いつも冷めたような顔してるクセに。ほんと無駄にやさしいヤツ。




「じゃあ渚は、おごり目的じゃないなら、何目当てであたしとつるんでるわけ?」

「…………………………スリルとか?」



言いながら渚がカフェラテを飲み終えたあたしにキスしてくる。

周囲から突き刺さるような視線は感じたけど。



べつにこの程度のシチュエーションじゃ、スリルもへったくれもないのに。


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