可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
『入学してちょうど1ヵ月ちょい、そろそろカレシカノジョが欲しくなる頃だもんねー。そりゃみんな気合入っちゃうよ』
そう言っていた山根まで、自撮りした私服の写メを何枚も見せてきて『パンツとスカートとキュロット、どれがいいと思う?』とあたしなんかに意見を求めてきたり。
『やっぱさ、私服ってのがいいよね。普段どういう感じなのか素顔っぽい姿見られるのって、ちょっとどきっとするよね』
ニクちゃんもどっちかというと何を食べ歩くのかとか、どんなアトラクションに乗るのかを楽しみにしてるんだと思ってたのに、ほわっとした顔でそんなことを言い出したり。
とにかく教室じゅうが、妙な熱に冒されたかのような空気で。
山根の言ってたはずかしい言葉を借りるなら、みんな淡いながらも『恋の予感』的なものを明日のHRデーに期待してるようだった。
---------------------あほくさっ。
そう思ったあたしの心を見抜いたようなタイミングで、追加のメールが届く。
『From : 王様
Subject : 無題
由太たちと行くから現地集合で。
電車、俺らと一緒がいいならそれでもいいけど。
その場合、三條駅に6時45分集合』
王様はあたしが明日行くことを勝手に決定事項にしてやがる。
しかも数分後にさらに追加で。
『家まで迎えに来てほしいなら、要相談。早めに連絡よこせ』
こっちの都合なんておかまいなしな渚のメールに、『行かねぇつってんだろ』と打って返信しかけて。
でもボタンを押す前に削除した。