可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
今更海辺に引き返すのも不自然だから、仕方なく石段を上りきる。
そのままクラスメイトたちでごったがえしている広間に一歩足を進めると。ざわついていた広間が一瞬しん、と静まり返った。
そこにいるクラスメイトたちから、居心地が悪くなるくらい視線を向けられる。
「………うわ……っ。ヤバくね?」
「誰、あのコ」
佐々木とかいつも渚の周りにいる連中から、やたらと熱っぽい声が聞こえてくる。そいつらはあたしの顔なのか体なのか、無遠慮にじろじろ眺め回してくる。
「天使とかじゃね?」
「アホか。……けどマジでそれ系だな」
「レベル高すぎっしょ。うちのクラスの女どもと次元違いすぎじゃん?」
あたしのことを馬鹿にしてるのか、冗談なのか、佐々木たちはあたしを見て聞こえよがしに言ってくる。あまりにもその視線があからさますぎて気まずいっていうか。
ガン見してくる目がマジすぎて怖い。
でも広間を突っ切って駅に向かうには、佐々木たちがいる前を通らなきゃならない。大きく迂回して避けるのも変だから、仕方なくそのまま歩いてく。
距離が縮まるごとに、肌に感じる視線もいっそう強くなっていく。
「やべ。この距離で見ても超かわいいし」
「俺この前5組の女に告られたけどさ。100人のブスにモテるより、ああいうコ1人にモテてみてーわ」
「言えてる。って、あれ、今こっち見たんじゃん?」
「……マジ?手でも振ってみる?」
「つか誰か声掛けて来いよ。ダメ元でも行く価値ありじゃん?」
声のする方へちらりと一瞬だけ視線を走らせたけど、そこに渚の姿はなかった。
てっきり渚は佐々木たちといると思ったのに。