可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
◆ ◇
『崎谷さんってさ、どんどんブスになってくと思わない?』
不意に。中学のとき、同じクラスの女子が叩いてた陰口が脳裏に浮かんでくる。
『わかるそれ。1年のときマジ天使だったのにね、清楚系で』
『ああいうちょっとロリっぽい美人って、たぶん小学生くらいのときがいちばん可愛いんだろうね』
『何それ、哀れすぎだし。ピークが小学生の頃とか、あとは落ちる一方じゃん』
その子たちは、あたしが進路相談室から戻ってきたことに気付かなかったみたいで、大きな声で好き勝手あたしのことを貶してた。
『実際崎谷さんなんて落ち目じゃん?中1のときの集合写真と比べると、すごい劣化してるの分かるよ』
『まじ?今度見せてよ。でもさ男子たち、いまだにあの人ちやほやするからムカつく』
『ほんっとあの馬鹿ども、女見る目ないよね。あたしが男だったら崎谷さんとかマジないわ』
『性格最悪だし、中学生でブランド狂いとか逆にダサいしねー』
こんなとき。ちょっと前までなら、大人しく物陰に隠れてないで『陰口叩いて喜んでる方が、よっぽど性格悪いんじゃない?』って言って出て行ったはずだ。
でもそのときあたしは、廊下の陰で立ち止まったまま動けなくなっていた。
だってつい数日前、聖人にも似たようなことを言われたばかりだったから。