可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

そう言って渚が歩き出そうとすると。

一瞬目の前の展開についていけずにぽかんと間抜けに口を開けていた佐々木が、あたしたちを追ってきた。



「ちょ、水原……っ」
「んだよ」


呼び止められた渚が不快そうに目をすがめたから、佐々木はその気迫にびびったように首を竦めた。


「おまえ、こ、この子の知り合い?……誰なの?」



佐々木の声が裏返ってる。本気であたしが誰だか分からないらしい。

渚は一瞬いたずらっぽい目配せをあたしにした後。




「俺のセフレ」



こともなげにそう言う。



「悪いけど、コイツ俺専用だから。勝手に手ぇ出すなよ?」



渚がにやっと悪い笑みを浮かべた途端、佐々木だけじゃなくて佐々木に寄って来ていた他のやつらまで顔を真っ赤にした。



「は?……セフレっ!?」
「お。おま、おまえ、カノジョいんだろッ」

「だよ!谷岡先輩どうすんだよ!?マジ信じらんねぇ」
「あんな美人と付き合ってるのに、こんなカワいいコとも付き合ってんのかよっ」」

「こんな堂々と二股とか、いくら水原でも引くわ」




非難轟々。


佐々木たちは怒ってるような羨むような、それでいて悔しげなような、そんな顔して渚を責める。

けど渚は涼しい顔だ。



「ばぁか。マジでセフレだったら、こんなとこ呼ぶわけねぇだろ」



渚はそういって軽くあしらった。



「ただの女友達だから」



< 128 / 306 >

この作品をシェア

pagetop