可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「……そういえば、今どこ向かってんの?」
シーサイドラインと言うだけあって、窓の外は海岸沿いの景色が続いていた。
「とりあえず次ぎ、京浜東北線に乗り換える」
もったいぶってるのか、渚は行き先を教えてくれない。
でもおたのしみを最後まで取っておくような趣向を、悪くないとか思ってる。
だいぶ渚にペースを握られてるけど。でも主導権を明け渡してることが、なぜか心地いい。
外の景色も青い空が続いていて、いつも淀んでる東京湾の海面も、まっさらな空から降り注ぐ光を反射してきらきら光っている。
-----------HRデーなんて来たくもなかったのに。
目に映るものが今日はなにもかも鮮やかに見える。
今この時間を、見ているものを、隣にいる渚を。
あたしの頭は勝手に記憶に焼き付けようとしている。
「渚、もっとうるさいかと思った」
埋立地の人工的な海岸のラインを見ながら呟いていた。駅で人が乗り入れてきて渚との距離が近くなっていたせいか、渚はあたしの小声を聞き取って尋ねてくる。
「何が?」
「………服これだから、怒るかと思ってた」