可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「………盛るって?」
「はいはい、そういうすっとぼけとかいいから。ウチの姉貴もすげぇよ。ど貧乳だからえげつねぇの丸分かり。ノーブラの寝起きと上げ底フル装備で出勤するときと、ビフォーアフター、工事状態」
「なにそれ」
「盛土の工事っての?盛り方、河川敷の土手並みだから。まっ平らな地平線からど根性ですんげえ急勾配つくりやがんの。突貫で。あれこそ化けモンの所業だな。あのニセモンに引っ掛けられる男が哀れすぎ」
渚の表現がおかしすぎてあたしが吹き出すと。
家族ネタで笑いを取ったことに、渚はすこし気恥ずかしそうに目元を歪ませながら言った。
「ま、姉貴のおかげで夢見なくなったけどな。デカく見えてもどうせ上げ底だろって思ってりゃ、がっかりしねぇし」
「ふぅん。渚ってそんな胸フェチだったんだ?」
あたしの言葉に、渚はなんとも決まりが悪そうな顔をする。
「……馬鹿。フェチとか言わねぇだろ、嫌いな男とかいるわけねぇし、メジャーな嗜好だろ。……ってか変なこと言わせるな」
「つーか、渚、お姉さんいたんだ」
「いる。チビのくせに口うるさくてやたらと男前なのが」
わずらわしそうに言いつつも、苦笑する渚の表情がやわらかい。
あたしは、家族のことを話すとき、こんな顔はできない。