可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「いいな。イケメンなお姉さんかあ」
渚が敬意を込めて『男前』っていうくらいなんだから、きっとすごくきれいでかっこいいひとなんだろう。
ちょっとうらやましい。
渚に慕われてるお姉さんも、慕うことが出来るお姉さんがいる渚のことも。
「そ。他にもうっせぇのがいるけど、姉貴が一番イケメンかもな」
「ふーん。にぎやかそうでいいじゃん」
「にぎやかっつぅか。マジでうっせぇよ。ウチ兄弟4人でガキみたいな親父までいるから」
またひとつ、知らなかった渚の扉が開かれる。
一見冷めてるように見える渚の、内側から沁みてくるようなあたたかさって。
きっと渚が育った家庭とか家族とか、そういうものに深く根ざしているんだ。
………だから渚は、揺らがないんだ。
いい意味で、円満な家庭で育ったひと特有の、どっしりと構えた雰囲気を渚に感じる。
同じようにゲスな遊びをしてても、あたしと渚は、やっぱ根本的に人間が違う。
たとえ今こうして一緒にいようとも、この王様は、あたしの手の届かない存在だ。
そのことが悔しいとか悲しいんじゃなくて。ただ眩しく思える。